演習論文

※國學院大學神道文化学部の現在のカリキュラムでは「卒業論文」がありませんが、3・4年次に履修する基幹演習科目で「演習論文」が課されます。下記の内容は、過去に「卒業論文」が課されていたときに記したものをベースとしています。

このページでは、私が國學院大學神道文化学部で演習論文の指導を担当する学生の皆さんに向けて、研究・執筆の仕方や注意点、参考情報などを記していきます。

論文を書くのはとても大変です。私もいつも悩み、苦しんでいます。しかし、自分が考え、調べてきたことを人に認めてもらうために形あるものにまとめあげる作業は、何ものにも代えがたい達成感をもたらしてくれるものです。

残念なことに、演習論文は大学に提出した後、指導教員が読んで評価して終わりです。もしも多くの人に読んでほしいと思ったら、せっかくですからいろいろな発表の機会を探るとよいでしょう。今はインターネットという便利なメディアがあります。

また、演習論文には締め切りがあります。そのため計画的に研究を進めていかなければなりません。最終的に自分が明らかにしたいこと、主張したいことを論文で説ききるためには、どのような調査が必要で、どのように記録・資料を収集整理していけば役に立つか、常に意識することが重要になります。つまり、目標に向かって日々の努力を積み重ねていくことです。

目次

演習論文作成のスケジュール

3年生 4年生
4月 演習I開始 演習II開始
7月 研究計画書提出 研究計画書提出
10〜12月 中間発表 中間発表
12月 草稿添削 草稿添削
1月 中間リポート提出 演習論文提出

[↑目次へ]

連絡、相談

演習論文のための連絡、相談は随時受け付けています。メール、K-SMAPY、オフィスアワーを遠慮なく積極的に利用してください。

自宅などから大学のアカウントのメールを送受信する方法

意外に知らない人が多いようです。以下のページを参照してください。

[↑目次へ]

研究と論文執筆の過程

2年間にわたる過程を大まかに確認しておきましょう。

研究題目の検討 (3年次・4年次とも5月)

自分が興味のあるテーマを具体的に考える。この時点で、基本的な文献や念頭にある具体的事象をある程度押さえておくことが重要。

先行研究サーベイ (3年次前半~)

題目について過去にどのような研究・知見があるか調べ上げ、研究テーマを再度練る。OPAC、文献データベースの利用方法に慣れておき、学内外の図書館をフル活用する。このときに調べた文献の書誌情報は、あとで本文を執筆するときに必要になるので、きちんと記録しておくこと。

研究計画を立てる (3年次・4年次とも7月)

以下の項目について具体的に明確にする。

  • 研究題目
  • 研究の目的、意義
  • 研究対象
  • 研究方法
  • スケジュール
調査・分析 (4年次夏休みまで)

研究内容により、文献調査、現地調査などを行い、分析する。あらかじめ、文献資料の扱い方や、調査法などの基本を学ばなければならない。3年次にも予備調査を行っておくとよい。

中間リポート執筆 (〜3年次1月初旬)

今までの研究成果を文章に構成してみる。6000字以上。章立て、文献引用書式、論旨の展開などについて添削を受ける。このときまでに一定の「スタイル」(後述) にしたがって書く習慣を身につける。

演習論文執筆 (~4年次12月)

研究成果を論文の形式 (序論・本論・結論) に構成し、執筆する。12000字以上。

推敲 (~締め切り)

草稿をK-SMAPYに提出し、添削を受ける。

書式や誤字・脱字、段落構成などを再チェックする。

[↑目次へ]

研究計画書について

3年次・4年次の7月に、以下の項目からなる「研究計画書」をA4判1枚程度にまとめて提出し、簡単に説明できるように準備をしておいてください。

  • 題目(案)
  • 研究の目的、意義
  • 研究対象
  • 研究方法
  • 締め切りまでのスケジュール
  • これまでの先行研究サーベイ、予備調査の成果
  • 参考文献

[↑目次へ]

中間発表

3・4年次後期の演習では中間発表を行う。

次の内容をA4 1〜4ページ程度のレジュメにまとめ、発表の準備をする。レジュメは各自で人数分コピーしておくこと。

  • 3年生: (1)テーマについて、既にわかっている事柄とその出典(先行研究)。(2)自分が特に探究したい具体的な問い、または仮説。(3)これまでの調査の成果。(4) これからの調査方針と困っている点。

  • 4年生: (1)目次、(2)序論(研究の目的を記した箇所の抜粋でよい)、(3)これまでの調査の成果、(3) 論文をまとめるにあたって困っている点。

[↑目次へ]

インタビュー調査について

過去の卒業論文・演習論文の指導で話題になった、インタビュー調査について、要点をメモしておきます。

  • 準備: 「インタビューガイド」を作成しておく。インタビューの目的・必要性、質問項目を列挙した文書を作り、インタビューに備える。
  • あらかじめ質問項目を相手に伝えておくと、面接時により深い内容を聞くことができる。
  • インタビューの録音許可をとる。
  • インタビューを終えたらできるだけ早くテープ起こしをする。
  • テープ起こしをもとに内容を整理し、分析を加える。

[↑目次へ]

「スタイル」について

論文は一貫した「スタイル」style にしたがって書かなければなりません。style を「文体」と訳すと、「華麗な文体」や「格調高い文体」のような意味にとれてしまいますが、そういう主観的な印象の話ではありません。具体的には、次のような文章の体裁のことです。

  • 章・節の区分
  • 句読点
  • 漢字とかな表記、送り仮名
  • 固有名詞の表記
  • 年号等の数の表記
  • 引用の形式
  • 図表とキャプションの付加
  • 引用・参照文献の典拠表記

米国では、The Chicago Manual of Style という本が定番として参照されているようです (上記の項目もこの本を参考にしました)。日本語の論文での定番参考書は、これというものを挙げるのが難しく、研究分野によってかなり異なっているのが実状です。

ここでは、最低限のスタイル・ルールを挙げておきます。

  • 必ず章・節の区分を立てること。
  • 文献の引用は、短文なら本文中に「  」にして入れること。数行以上にわたる場合は、引用箇所全体を本文より2字下げて記すこと。
  • 引用文を掲載するときは、必ず本文中または注で、その典拠を明記すること。
  • 注は各章・節の終わり、または論文全体の末尾に番号順に列記するか、本文中に割注の形で記入すること。
  • 参照した研究書は、必ず編著者名・文献名・出版社名・刊行年・頁を明記すること。

研究論文の場合:

黒崎浩行「日本宗教におけるインターネット利用の社会的文脈」(『國學院大學日本文化研究所紀要』85、2000年)、579頁。

研究書の場合:

大谷栄一・川又俊則・菊池裕生編『構築される信念―宗教社会学のアクチュアリティを求めて―』(ハーベスト社、2000年)、86頁。

  • 巻末に参考文献目録をつける。研究書・研究論文・資料 (史料) などに分類しておくとよい。
  • 写真・図版・地図を入れる場合、それらに番号と簡単な説明 (キャプション) を書き入れ、本文と対照させること。

引用・参照した文献の典拠表記は、上記のような形式以外にも、さまざまな書き方があります。私が勧めているのは、『宗教と社会』の投稿案内にある形式です。詳しくはリンク先を参照してください。

どのような形式であっても、とにかく冒頭から最後まで一貫していることが大事です。それによって、文章の構成や、地の文 (自分のオリジナルの文章) と引用文の区別などが明確になり、他人が読んで評価することのできる論文の形が整います。

[↑目次へ]

論文提出時の体裁について

前に説明したのは、論文の本文をどのような形式で書くか、という話でした。論文を提出するときには、それだけでなく、履修要綱に書かれている所定の体裁(用紙の判型、1ページあたりの文字数など)に従う必要があります。規定どおりでないと受理してもらえません。提出間際になってあわてないように、今のうちに確認しておきましょう。

[↑目次へ]